2005.12.29 Thursday
<書評> ディアスポラ
著者:グレッグ・イーガン
出版社:早川書房(ハヤカワ文庫SF) 西暦30世紀、「肉体人」として生きることを選んだ一部の保守主義者以外、すでにほとんどの人類は「ポリス」と呼ばれる仮想空間内に精神をソフトウェア化して移入していた。 すでに宇宙の叡智を手にしたかのような人類だったが、数百万年後と思われていたトカゲ座中性子星のバーストにより肉体人は絶滅の危機を迎える。 「まだ宇宙には自分たちの知らないことがある。」そう考えた一部のポリス人は、その謎を解くため、そしてその謎を知る知的生命体に出会うため、自身たちの千のコピーを作製し、宇宙の千の方向に射出するという「ディアスポラ計画」を発動させた…。 というのが骨子ですが、さすがにイーガン。ハードSF過ぎてもうなに書いてるのかわけわからん状態が凄まじい。 ポリス人はコンピュータ上で動いているのですでに肉体人とは時間の感覚が異なっており、巻末の換算表によれば、肉体人にとっての32年は、ポリス人の主観時間では27000年! そもそもポリスが破壊されない限り物理的に死ぬという概念がないので、彼らの旅は主観時間で数百万、数千万年続きます。もちろん、なにか生命体の兆候が見つかったときのみ起動するスリープ状態に設定したり出来るわけですが、それにしても壮大すぎ。 ポリスが数十年に一度ランダムに誕生させる「孤児」の発生から成長、自我に目覚めるまでを描いた第一章は全身総毛だつ素晴らしさ。 「SFの愉悦」を心ゆくまで堪能できます。まったくすごい。 本年度ベスト1。 |