2006.01.15 Sunday
<書評> 包帯クラブ
著者:天童荒太
出版社:筑摩書房 「永遠の仔」以来七年ぶりの天童荒太の書き下ろし。 ゲラで読ませていただく機会を得ました。 「人の心の傷」に対し常に自身の思いを過剰なまでに作品に注ぎ込んでしまう彼ならではの、まさにリアルタイムな天童荒太がここにある。 「家族狩り」→「永遠の仔」→全面改稿文庫版「家族狩り」→本書、という流れを俯瞰すると、ああ、こういうのを書かねばならなかったんだな、というのが実に納得できる。そんなお話です。 「傷」を描くための殺伐とした描写、設定というのは今回ほとんどありません。フレームを小さくして、身近な悩みに対し優しく思考する、静かな佳品です。 同じような話はいろんな人が書いてるかもしれませんが、「天童荒太の歴史」が確かに刻み込まれているからこそ、この本のせつなさと優しさが際立つのでしょう。 面白かったです。 それにしてもなんでこれがちくまプリマー新書で出るの? まあいいか。二月に発売予定です。 |