2005.12.26 Monday
<書評> 悪役レスラーは笑う
著者:森達也
出版社:岩波書店(岩波新書) うおお、岩波から森達也の書いたプロレス本て! とびっくりしましたが、正確にはプロレスについて書いた本ではなく、あくまで「グレート東郷」という悪役レスラーに焦点をあわせたノンフィクション。対象がたまたまレスラーだったということです。 東郷は日系二世として、終戦後のアメリカのリングで日本人に対する憎悪を一身に背負って悪役を演じ続けた男。 守銭奴として業界のあらゆる人間に嫌われながら、なぜか力道山からは慕われた男。 その力道山との関係に焦点を当てながら、東郷の出自にまで突っ込んでいきます(力道山は在日一世)。 そして最後にインタビューしたグレート草津から衝撃の発言が飛び出す。 いや、上手いなあ。淡々と調べた事実を書くのではなく、あくまで「森達也の主観」を赤裸々に露呈し、過程を丸ごとさらけ出す手法はいつもながら静かな感動を呼びます。 双子のように誕生してもつれ合って、やがて別れたプロレスとテレビの関係といったメディア論も盛り込み、780円でこんなの読めるとは。 よかったです。 |