2005.07.10 Sunday
<書評> 死亡推定時刻
著者:朔立木
出版社:光文社 いやーおもしろかった。 おもしろいのは大変結構なんですが、この本の場合、「えっ、そこでおもしろくていいの?」という感じ。 ある誘拐事件において、警察がとっさの身代金の受け渡しを拒否させ、結局被害者は死体で発見された。 被害者の父と癒着していた警察幹部は、警察の失態としないために、死亡推定時刻を身代金受け渡しより前に改変させた。つまり、「受け渡しに失敗したから犯人は怒って殺害した」可能性を隠蔽したのだ。 そして死体から金を盗んだだけの男が誘拐犯人として逮捕されてしまう。 こう書くと話はとても面白そうなんですが、実はこの本何が面白いって、ストーリーではなくて、とにかく微に入り細を穿つ警察の取り調べ、起訴、裁判の手続きなどの圧倒的リアルな描写なのです。 著者は弁護士か検事か知りませんが法曹界の人物らしく、冤罪が作られていく過程をこれでもかと積み重ねていきます。ここが滅法おもしろい。 次第に死亡推定時刻のテーマはなんかどうでもよくなっていってしまい、そっちのほうはわりと尻すぼみに。 というわけで、おもしろさは抜群なのに「そこじゃないだろ!」というヘンな本になってしまいました(笑)。 |