2005.07.20 Wednesday
<書評> バースト・ゾーン ―爆裂地区
著者:吉村萬壱
出版社:早川書房 「ハリガネムシ」で二年前に芥川賞を受賞した著者の、初の書き下ろし長編がなぜハヤカワなんだ? と思って読んでみたら、なんとも不気味なSFだったのでした。 いつの時代なのか、現代と地続きの日本なのかどうかすらわからない国、『テロリン』と称する正体不明のテロリストにより絶えず攻撃され、戦意高揚の国家政策により志願兵となってテロリン撲滅のために『大陸』へと送られる国民。 だがなにも知らされないまま大陸へと送り込まれた兵士たちが遭遇するのは、『神充』という牛のような体を持ち、頭から出る管でヒトの脳みそを吸い上げてしまう化け物の集団だった。これが、テロリン? キャラ設定やディティール描写に独特の癖というか、不快感をことさらに煽るようなところがあって、嫌な気分になるけど、でもなんともいえない魅力もあって、不思議な文体。 深いテーマがありそうでなさそうで、とにかくつかみ所のない話だけど、面白くないわけじゃない。だからといってべた褒めも出来ない。 なんとも厄介な本です。これだけの意味不明さをこれだけのテンションでこれだけの量を書けるのはすごいですが。 |