伯方雪日の罵詈淘奴日記

罵詈淘奴=バーリ・トゥード=ポルトガル語で「なんでもあり」です
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<書評> 孤立、無援
著者:阪本順治
出版社:ぴあ


現代映画監督のうちで唯一、僕がそのほぼ全作をリアルタイムで見続けているのが阪本順治です。
「どついたるねん」を最初に見たときの興奮は今でも覚えています。続く「鉄拳」のあまりにも確信犯的なめちゃくちゃさ、四作目「トカレフ」のこの人、人間的にやばいじゃないかと思うような屈折具合など、確かな演出力の裏側にある「阪本順二という人間性」の面白さを見てきたつもりです。
最新作「亡国のイージス」を機に、この本が出ました。正確には著作ではなく語り下ろしです。
俳優のキャリアを一度リセットしてしまうかのような、まったく新たな魅力を引き出す演出力(「王手」の加藤雅也を見よ!)、天邪鬼としか思えないガキのようなひねくれっぷり、石井聰亙や井筒和幸の助監督時代から「亡国のイージス」までたっぷり浸れます。
この言葉が、なんだか端的に彼を表している気がしたので引用しておきます。

後ろ向きに全力疾走。そんな気分だった。(「トカレフ」撮影時の気持ち)
| 伯方雪日(はかたゆきひ) | 書評 | 08:20 | comments(9) | trackbacks(0) |
<書評> 日本怪奇小説傑作集1
編者:紀田順一郎/東雅夫
出版社:東京創元社(創元推理文庫)


全三巻のうちの一巻目です。
明治以降のホラーものの傑作を時代順に並べてあるので、この巻は小泉八雲、泉鏡花から始まり、夢野久作、佐藤春夫などまで。
僕は元来イマジネーションが足りないのか、小説で恐怖感を感じたことがあまりないのです。怖さのツボがどこかわからない、という感じで。
昔のキングなんかのわかりやすい怖さなんかはバリバリだったのですが、こういう日本的怪談風のもの、ふと思い返してぞっとするような感覚に対して鈍いのです。それが悔しい。
このアンソロジーも、なんとなく距離を置いたまま読み終えてしまいました。それでも巻頭の小泉八雲「茶碗の中」は、話のぶつ切れっぷりがすごくて、後味の悪さにちょっとぞっとしました。
ベストは村山槐多「悪魔の舌」ですね。こういうグロい話のほうが好きです(笑)。やはりホラー映画よりスプラッタが好きなのです。
| 伯方雪日(はかたゆきひ) | 書評 | 07:58 | comments(9) | trackbacks(1) |