2005.06.07 Tuesday
<書評> 雨の午後の降霊会
著者:マーク・マクシェーン
出版社:東京創元社(創元推理文庫) ロンドン郊外に住むある夫婦がたくらんだ誘拐事件。 目的は身代金ではなく、人質そのものでもない。 「霊媒師」である妻が、自らが誘拐した子供の居場所を「霊視」して、霊能力者としての評判を上げるための茶番だった。 うん、なかなか面白いストーリーです。 そしてこの話のなかなか危うい微妙さを醸しているのが、霊媒である妻は自分の能力を完全に信じていて、この犯罪はあくまでメジャーになるための現実的手段だと思っている点。 そして、重大犯罪にはじめて手を染める人間の緊張や間抜けっぷりのリアルさ。 犯人が計算しまくって完璧に動くようなありがちなものと違い、ちょっとしたミスを繰り返し、喘息の発作で死にそうになってる夫の情けなさはほとんどギャグで、同情の余地のないはずの夫婦に妙な思い入れを生じさせてしまう。 オチはまあ読める範囲ですが、二人の間抜けさにトドメを刺すものでした。わっはっは! さらりと読めて、さらりと面白い本でした。うん。 |