伯方雪日の罵詈淘奴日記

罵詈淘奴=バーリ・トゥード=ポルトガル語で「なんでもあり」です
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最近読んだ本
ジェイムズ・エルロイ「獣どもの街」(文春文庫)

今の僕が、最も好きな作家を一人挙げよと言われれば、それはエルロイになるかもしれない。
悪夢のブツ切れ文体を完成させた「ホワイト・ジャズ」は、そのぶっとびさに、いったいオリジナルはどういう表現なのか原書まで買ったほどだ(もちろん通してなど読めない。気になる部分を確認しただけ)。
そのエルロイ、「アメリカン・デストリップ」以降もう五年も訳書が出ておらず、禁断症状が出かかっていたころようやく本書が出たわけだ。
中編集ということで、いつもの錯綜しすぎて作者にも制御不能と化したかのような(それすら綿密な計算にも見える)暴走プロットはないが、そんなこたいいんです、エルロイが読めりゃあ。
慈しむように一編一編読みました。ああ、たまらん。主役二人のめちゃくちゃな関係性がもうエルロイ天国かつエルロイ地獄。何言ってんだ俺。
頭韻踏みまくった翻訳もご苦労様でした。


道尾秀介「シャドウ」(東京創元社)

「向日葵」で打ちのめされて以来、道尾さんの本は全てチェックしているのだけど、何ですか、この人。上手くなるスピードが尋常じゃない。
ぎこちなさが武器だったような「向日葵」に比べ、滑らかでサスペンスフルな展開は早くも職人芸の感も。
そして、ラストに炸裂、道尾節。またもややられた…。あんたすげえよ!


平山夢明「独白するユニバーサル横メルカトル」(光文社)

これは今のところ今年のベストかな。
短編集だけど、ひとつひとつの話が全てそのまま、まったく別の長編に使える素晴らしく魅力的な設定に溢れていて、もうもったいないことこの上なし。
表題作は、タクシーの運ちゃんの横に置かれた道路地図の独白というけったいなシロモノだが、驚異的な面白さ。人間は誰も知らない地図族の歴史とか、忠実な執事キャラとか、編図との淡い恋とか、面白すぎ。わりと普通のサイコキラーものが、視点をずらすことによって究極のオリジナリティとも言うべき傑作に。
ナビゲーションシステムに毒づく地図ちゃんがかわいい(笑)。



| 伯方雪日(はかたゆきひ) | 書評 | 00:44 | comments(14) | trackbacks(17) |